このプロジェクトについて教えてください。

 近年、全国的な傾向として、教員採用試験や教員養成大学及び学部の倍率が下がってきています。教員のマイナスイメージの報道による影響が大きいと思います。私の身近でも、本人は教員を志望していても保護者の反対を受けて断念したケースもありました。

 さて、これまで「教職の魅力」というと教育関係者の範囲で議論されてきました。しかし、時代の変化や「社会に開かれた教育」の重要性が強調され、コミュニティスクールに代表されるように、地域社会で学校を支え運営していく方向性が出され、多様な社会の声を教育に反映させるための仕組みの構築が強く求められています。加えて、現在のコロナ禍において、教育や学校、教職の在り方は、多様な立場からの精査や根本的な見直しが迫られています。このような状況の中、地域フォーラムやオンラインアンケートを通じて、現在の社会における教職に対するイメージを探り、「教職の魅力向上」に向けた課題を定量的・定性的に明らかにするプロジェクトです。また、フォーラムの成果やアンケート結果を専用ウェブサイトやリーフレット、動画等を活用して広く発信していきたいと考えています。

学長が考える「教職の魅力」とは何ですか?

 私は、スポーツマンでいつも笑顔を絶やさない小学校高学年の担任の先生に憧れ、教師になりたいと思いました。中学校2年生の担任の先生は、国語教師で驚くほど本を読んでおられ、その専門性の高さに感心し、自分も何かに秀でた教師になりたいと思いました。高校1年生の担任の先生は、型破りで私の教師観を覆されましたが、面倒見のよさ、生徒との距離の近さに親しみを感じました。また、その先生は生物学が専門であり、大いに感化され、私も大学では生物学を専攻することにしました。このように、教師の仕事あるいはその個性は、大いに子どもの成長に影響を与えると思います。

 大学院修了後、私は、14年間小学校教師をしました。教師は、時間もかかり忍耐のいる仕事です。子どもは一人一人個性が違うので、マニュアル的な方法はありません。誠意をもって接し、目の輝きや伸びていく姿を見ると、教師をしていてよかったと感じます。また、卒業後もずっと教師としてかかわり、彼らが人生を切り拓いている姿を見ると感激します。

 例えば、とてもやんちゃだったのに、立派に家業を継いで経営している子、卒業文集に「看護婦さんになりたい」と書き、夢を叶え看護師になり、子育てをしながら頑張っている子、職を転々としたあとで、あるきっかけで大成功している子などです。中でも、「野田先生のような先生になりたい」と言って、本当に小学校教師になった子と連絡があったときには、大変嬉しく思いました。小学校教師のときも大学教員になっても、何度も驚き喜びまた涙しました。このように、教師という仕事は、感動の多い職業だと思います。